筆者は今、沖縄県那覇市のホテルの一室でこの原稿を書いている。今回沖縄を訪れた目的は、1ヵ月ほど前に発生した沖縄辺野古沖での船舶転覆事故の取材をすることにあった。
 この転覆事故を巡っては、船を操縦していた船長と乗船していた女子高生の2人が亡くなっており、これを受けてこの海域を所管する海上保安本部が捜査に乗り出し、立件は確実な情勢となっている。
 しかしそれにしてもこの一件に関して言えば、学校の教育現場で発生した事故であることを踏まえるならば、おおよそ世間の常識とはかけ離れたと言っていいぐらいの歪な教育現場が形成されていたことにまず驚かさせられる。
 まず注目すべきはこの事故が発生したのが、転覆事故によって命を奪われてしまった女子生徒が通う同志社国際高校が企画した、「研修旅行」という名の学校行事の最中だったという点だろう。通常こうした学校行事の場合、学校側は自らが指定した旅行代理店と全面的に連携する形で催行されるのが普通だ。にもかかわらず事故を起こしたこのプログラム、海上から基地建設の現場を見学する、に関しては旅行代理店はまったくノータッチだったのである。つまりこのプログラムについては、「学校手配」ということになる。
 従ってこのプログラムに関しては学校側がその全責任を負うことになる。しかし、学校側、つまり同志社国際高校は、このプログラムに2人の教員を同行させていたにもかかわらず、その教員は誰もその船には乗船しなかったのである。
 そもそもそうした学校行事に関して言うならば、引率教員にとっての最大の役目は生徒の安全を確保することにある。にもかかわらずこのプログラムに参加した教員は、体調不良を理由にその役目を放棄してしまったのである。もし引率教員が船に乗っていたならば、亡くなられた女子生徒はもっと早い段階で発見されていた可能性があるのだ。
 いずれにしても4月24日、文部科学省が学校法人同志社に対して異例の「現地調査」に踏み切ることとなった。同志社国際高校のような私学の場合、その直接の所轄庁は都道府県知事となっている。従って同校の場合、京都府知事がその所轄庁となる。このため文科省は、京都府を通じて同志社国際高校に聞き取り調査を実施してきたが、納得のいく回答が得られないとして、直接調査を実施することとなったのである。
 文科省が今回の調査で明らかにしようとしているのは、以下の3点だ。
① 安全管理体制の確認
② 教育内容の適切性
③ 保護者への説明状況
 そしてここで注目すべきなのは、②の教育内容の適切性だ。具体的には、抗議船に生徒を乗船させて辺野古沖からキャンプ・シュワブの工事現場を見学させることが、果たして教育基本法、あるいは学習指導要領で定められた政治的に中立な学習にあたるのかどうかという点に他ならない。
 同志社国際高校の場合、前述のプログラムは「平和学習」の名のもとに実施されたものだ。改めて指摘するまでもなく、「平和学習」や「平和教育」自体は否定されるべきものでは決してない。しかしだからと言って、特定の見方に偏った教育が行われていたとするならば、それは間違いなく教育基本法や学習指導要領に反することになるのは間違いない。
 果たしてその実態はどうだったのか。ここは文科省の調査に期待したい。
 さて、話は沖縄で取材中の筆者に戻る。今回、沖縄入りした筆者が改めて感じたことがある。それは、本土とはまったく異なった沖縄の報道環境だ。その意味するところの一点目は、朝日新聞や読売新聞といった全国紙と呼ばれる新聞を入手することが著しく困難な状況あるという点だ。
 具体的には、コンビニエンスストアにいっても、購入することのできる新聞は基本的には沖縄タイムスや琉球新報といった地元紙だけなのだ。コンビニを何店か回ってみたものの、手に入るのは前述の地元2紙だけ、もしくはせいぜい日本経済新聞ぐらいなのだ。空港の売店ですら、全国紙をみかけることはついぞなかったのである。
 そしてその地元2紙の前述の事故、事件に対する扱いが、実にあっさりとしたもので、強烈な違和感を感じざるを得なかったのである。地元を舞台として発生した事故、事件の割には、必要最小限度の報道に留まっているように見えるのだ。
 そもそもこの地元2紙は、辺野古基地の埋め立て工事については絶対反対の立場を鮮明にしているメディアだ。そしてその立場に立つからこそ、これまで転覆した船の運行主体である「ヘリ基地反対協議会」に完全に寄り添うスタンスをとってきたと言える。
 つまり今回の事故、事件は、地元2紙にとって不都合な出来事だったことは間違いない。従ってその報道姿勢が及び腰になるのもわからなくもない。もし仮に沖縄が新聞、テレビなどのオールドメディアしか存在しない世界だったとしたならば、おそらく多くの沖縄県民は一連の事件を知ることはほとんどなかっただろう。しかしネットの登場によって、その図式は完全に崩れることとなった。
 果たして沖縄県民は、今回の事件をどのように受け止めているのだろうか。今秋に予定されている沖縄県知事選挙で一つの答えが示されることになろう。