5月24日、高市早苗総理が珍しく記者団とのぶら下がり取材に応じ、一般会計の歳出規模が3兆円規模となる2026年度補正予算案を編成する方針を示した。
この時の高市総理の発言のポイントは、大きく以下に示す5点だ。
① 補正予算の歳出規模は総額3兆円強。前年度2025年度に発行を予定していた特例公債のうち、約3兆円程度が発行不要となる見込みなので(税収が上振れしたため)、その分を発行し財源に当てる。従って赤字国債の発行総額自体は増加しない。
② 7月から9月の電気・ガス代に関して一世帯あたり5000円程度を支援する。
③ 「中東情勢等対応予備費」を創設し、ガソリン代の補助の原資にする。
④ 「重点支援地方交付金」を追加し、地域の実情に合わせてLPガス料金の補助などに活用してもらう。
⑤ 来年春まで石油の安定供給ができるメドが立った。
⑥ ナフサ由来の石油製品の供給については、年を越えて継続することができるメドが立った。
⑦ とは言え例年行っている国民に対する省エネの呼びかけは、今年も継続する。
そもそも高市総理はこれまで補正予算の編成については否定的だったと言っていい。にもかかわらずなぜ、急転直下ここへ来てその編成に動いたのであろうか。
その最大の理由は、国民民主党への配慮だと言っていいだろう。国民民主党サイドは玉木雄一郎代表を筆頭に、高市政権に対して早期の補正予算の編成を求めていた。ここで言う「早期の」とは、当初予算が成立したならば即座にと言うぐらいのスピード感だ。加えて同党が求める補正予算編成の目的は、中東情勢の混乱に対処するためだった。
そもそも高市政権は、衆院においてこそ圧倒的多数を占めてはいるものの、参院においては少数与党の立場に甘んじているのが実情だ。高市政権にとって、唯一とも言えるウィークポイントが参院なのだ。
そのウィークポイントを埋めるための、最も手っ取り早く確実な手段が国民民主党を政権与党の枠組みに加えることであることは間違いない。しかも高市総理もそうなることを望んでいるし、国民民主党サイドも玉木代表、榛葉賀津也幹事長のツートップもその意欲は満々だと言っていいだろう。
そしてさらに加えて言うならば、高市政権にとって自他ともに認める最大の後ろ盾である麻生太郎副総裁も、国民民主党に太いパイプを持つだけでなく、そうなるように働きかけているのが実情だ。まさに両党は相思相愛の関係にあると見ていい。
しかしながら国民民主党の動きは、慎重すぎるほど慎重だ。それと言うのも、国民民主党にとって最大の支援団体である「連合」が、同党の連立入りに拒否反応を示しているからだ。
これはあくまでも筆者の見立てであるが、連合の存在こそが国民民主党の連立入りを阻んでいる最大の要因だろう。だからといって国民民主党が連合の反対を押し切って、連立政権入りするというのは無理な相談だろう。それは連合からの支援を失うことを意味する。
従って国民民主党は環境が整うまでは、つまり連合の了解が取れるまでは、高市政権と付かず離れずの関係を維持する戦略を取らざるを得ないはずだ。
その国民民主党の戦略の一端が垣間見えたのが、裁判所が再審開始を決定した際の検察からの抗告を禁止することを盛り込んだ再審法改正案が、与党自民党と法務省との激しい攻防の末に決着を見た時の同党の対応ぶりだ。
抗告禁止が法案に盛り込まれたことを見て取った国民民主党は、同法案が国会に提出されることを待つまでもなく、党として賛成することを決定してしまったのだ。もはやこれは「与党」としての振る舞い以外の何物でもないと言えよう。
この一件に関して国民民主党の執行部の一人は、筆者にこう言った。「自民党の中であれだけしっかりと議論して結論を出したのだから、ここは余計なことはせずに賛成しよう」と。この一言がすべてを物語っていると言えるだろう。
いずれにしても高市自民党と国民民主党の距離は、着実に縮まってきていることは確かだ。
本稿冒頭で紹介した、高市総理が今国会に補正予算案を提出するとの方針を表明したその背景には、こうした政治的思惑が働いていると見るべきだろう。これは高市政権から国民民主党に対する、ある種の政治的メッセージと考えるべきだろう。
果たしてこれを受けて国民民主党は、これからどのように動くのか、ここしばらくはこの両者の動きに目が離せない展開になってきたと言えよう。
どうやらこの秋にも、政界に激震が走りそうな気配が濃厚になってきたと見るのは果たして筆者だけだろうか。




























