去る7月25日、特別国会が何とか閉会となった。展開しだいでは、さらなる大幅な会期の再延長という大波乱もあり得ただけに、政府与党としては今の状況にホッとしているのは間違いないだろう。
通常国会冒頭解散という大ばくちに打って出て、自民党単独で衆院の3分の2以上の議席を獲得し、向かうところ敵無しの状態だと思われた高市政権だったが、主戦場が参院に移った途端に攻守が入れ替わり、守勢一色となったのは誰の目にも明らかだった。
中でも皇室典範改正案を巡る国会審議では、政府与党はまさに忍の一字だった。なぜなら「静謐な環境」の中での典範改正という前提条件が課せられてしまったために、政府与党は野党の顔色を伺いながらの国会運営となってしまったからに他ならない。
もっと言えば、野党サイドにとってみれば、典範改正案を巡って審議日程や採決日程を「人質」に取ってゴネにゴネまくるだけでノーリスクで政府与党を追い込むことができたのだ。野党にとってこれ以上ないという楽な展開だったはずだ。
もし仮に、こうした状況に業を煮やした与党が委員長職権で野党の了解を取ること無しに審議日程などを決めてしまったならば、野党は審議拒否や典範改正案に反対するだけで良かった。「静謐な環境」という前提条件が崩れ、典範改正案の成立が見通せなくなってしまうからだ。
しかもだ。参院は衆院と違って与党は議席の過半数を確保していない。つまり衆院とは一転して参院は少数与党の立場であるだけに、野党にキャスティングボードを握られ、政府与党は極めて苦しい国会運営を強いられることとなったのである。
ここで改めて考えてみたいのは、国会審議を進める上で法案の中身以外のところで発生している与野党間の攻防についてだ。
そもそも国会に提出された法案が可決するか否かについては、基本的には多数決で決することになる。しかしこれだけだと野党の存在意義はほぼなくなってしまう。しかし野党、あるいは野党の国会議員にも一定の民意がついていることは間違いない。つまりそうした「少数意見」を無視していいのか、という問題が出てくる。
そこで先人たちは知恵を絞り、そうした「少数意見」を尊重するために、法案を審議をするかしないか、あるいはどのような日程で審議をするかなどについては、与野党間で合意する形で進めようというルールを設けたのである。これが与野党間での「全会一致の原則」だ。
終盤国会で、衆院の定数削減法案を巡って野党が審議を拒否し国会が空転することとなったのも、この「全会一致の原則」が破られたからにほかならない。
議員立法である衆院定数削減法案に関していえば、野党サイドが強く反発する中、与党が強引に法案提出に踏み切ったものの、前述の「全会一致の原則」の壁に阻まれ、審議を開始するメドがまったく立たない状況にあった。そうした中、委員長職権によって野党の了解を得ないままの状態での法案審議を強行してしまったのだ。
当然のことながら野党はこれに激しく反発し、国会審議をすべて拒否、国会は完全に空転することとなってしまった。この結果、政府与党にとってみれば後半国会の最大のミッションともいえる皇室典範改正案の可決、成立も見通せなくなったのである。
結局のところ与党サイドが定数削減法案の審議をストップせざるを得ない状況に追い込まれてしまったのも当然だろう。
もちろん国会空転の責任の多くが、政府与党の強引な国会運営にあることは間違いない。しかし野党サイドにまったく問題が無いとは言い切れないはずだ。
確かに定数削減法案が多くの野党にとって意にそぐわない法案であることはよく理解できる。なぜならこの法案が成立した場合には、獲得議席数という点で多くの野党が大きなダメージを負ってしまう可能性が高いからだ。しかしマスコミが実施している各種世論調査を見れば、多くの国民が議員定数削減に賛成していることも事実なのだ。果たして今回の野党の振る舞いが、国民世論から支持を得られるのだろうか。
先人たちが生み出した知恵ともいえる「全会一致の原則」は、「少数意見の尊重」を実現させる上でのルールであり、最大限尊重されるべきものであることは間違いない。しかしその先人たちの知恵も、その使い方を誤ってしまったならば、むしろ民意を踏み躙ることになってしまうのではないだろうか。
確かに衆院においては巨大勢力となってしまった与党に対抗していくためには、「全会一致の原則」は野党にとって唯一ともいえる有効な武器なのかもしれない。とはいえその使い方を誤れば、野党から民意が離れていくことになろう。
ここへ来て政権支持率や与党の支持率が下落トレンドにあることは明白だ。しかしだからといって、野党の支持率が上昇トレンドに転じているわけでもない。
果たして国民、有権者は、ここ一連の政治状況をどのように受け止めているのだろうか。今後、実施されるであろう各種世論調査の結果を見守りたい。































