当社は1969年に印刷会社として設立。2019年に50周年を迎え、その翌年4月に私が3代目の代表に就任しました。
 創業者である祖父・木全孝清は1963年、喫茶店を中心とした飲食店向けに当時では珍しい少量多品種印刷を事業として始めました。店名の入ったマッチ箱や箸入れ、コースター、メニューといった仕事は、数が少なく手間がかかるということで他社は受けたがらない。その隙間を狙った事業展開で、それだけでなく、店の独自性を表現するデザインでお客様にご支持いただいたようです。
 しかし父・木全哲也の代になると長引く景気低迷で外食産業が伸び悩んだことに加え、世の中のIT 化によって従来の印刷物の数がどんどん減少。さらに、当社はデザインを売りにしていたのに巷にデザイン事務所やデザイナーが増え、競争が激しくなっていきました。そんな状況に対応するため、新たな柱にしようと始めたのが出版事業で、30年たった今では売り上げの3分の2を占めるまでになっています。

一気通貫が強み


 父が出版事業を立ち上げることになったきっかけは、父も会員であった愛知中小企業家同友会の会合に講師として招いたある大学の先生が、「授業で使うプリントを学生の人数分印刷して配ることが面倒だ」とおっしゃったこと。そこで思いついたのが、オンデマンド出版というシステムを用い、少部数のテキストを低コストで作成するサービスでした。
 そのテキストを大学内の書店で販売。売ったお金で印刷費を回収することで先生の金銭的負担をなしにするというスタイルでスタート。大学の先生は本来、授業より“研究”がメーンなので、ご自分の研究成果を世に出したいという思いを持っておられ、そこで一般書店やAmazonなど一般流通へと販売網を拡大。さらにコンサルタントや士業の方の「本を出したい」というお手伝いをするようになっていき、だんだん出版社としての事業を広げていった感じです。
 本づくりは一般的に、編集をする出版社と、それを印刷して本にする印刷会社とにわかれています。ですが当社はもともとが印刷会社なので、文字データの段階から、それを編集、印刷物にし、さらには流通させるまで、一気通貫、トータルでできるところに強みがあると思います。それぞれのお客さまに合うように、オプションのような部分を足したり引いたり自在にできるわけです。
 もちろん大手の出版社さんと比べると宣伝力はまだ弱いですが、2008年からオンデマンド出版を本格展開してきたことで、「どこでも買える」という状態は作り出せます。また、データがある限り少部数ずつ作り続けられますので、絶版にならないのも喜ばれています。

育ってきた絵本事業 さらにもう一本柱を


 近年、実績を積んできているのが絵本の事業です。
 最初は「何かの施設を紹介するのに絵本をつくって小児病院などに寄贈すれば、それを読んでその施設に興味を持ってもらえるんじゃないか」と、絵本を広告媒体として使う提案があって、「面白いね」からスタート。でも、お客様に提案しても「面白そうだね」とは言ってもらえても、「費用隊効果はどうなの?」と聞かれると、実績がないので、具体化までは話がなかなか進まない。
 そこで、じゃあ方向をちょっと変えて、「絵本を出したい人」の作品を世に出すサービスに転換したところと、イラストレーターの中に「いつかは絵本を出したかった」という人が結構いらっしゃったんです。
 表紙が厚くて硬いいハードカバーの本も内製化できるように設備も整え、出版する絵本の数をどんどん拡大。すると企業さんの目に留まるようになっていき、2018年には2019年に創業100年を迎えるカクダイ製菓さんとで、クッピーラムネのキャラクターを使った絵本を作成。その後は企業PRの絵本製作の仕事も増えていきました。
三恵社の「絵本工房」では企業の周年を記念しての事業の絵本化や、絵本を出したい人の夢をかなえる
三恵社の「絵本工房」では企業の周年を記念しての事業の絵本化や、絵本を出したい人の夢をかなえる


 創業時からの事業である外食産業向けの印刷の仕事もまだ残ってはいますが、こちらはここ数年で一層厳しい状態です。人手不足もあってメニューをタッチパネルにしてお客様に入力してもらう方式にする店も増えていますし、昨年の外食関係の売り上げは一昨年の半分くらいにまでなったんです。本当に「出版」という太い柱が立っていてよかったと思います。
 私の代になってから絵本に割と力を入れており、4年ほど前からは作家を育てる教室も始めました。でも、もう一本くらい、新たな柱を考えないといけない。それが急務だと、危機感を持っています。


【会社情報】
株式会社三恵社
本社:名古屋市北区中丸町2丁目24-1
℡ 052-915-5211(代)
https://www.sankeisha.com/