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 当社は2代目である現社長(町井三髙)の父親が1970年に自動車関係部品のプレス加工を手掛ける町井製作所を創業。77年に有限会社として法人化、翌78年に金型部門を新設、2003年には「溶接もやってほしい」という主要顧客からの要望で溶接部門も立ち上げました。
 「顧客のニーズに応える」って、簡単に言うと「丸投げできる会社」ということです。「こういうものを作りたい。あとはよろしく」と。当社は金型設計から試作、製作、それを使っての量産もし、溶接も、組み付けも、スポンジを貼るといったことも自社で行っており、そうした一貫生産体制に付加価値をいただいています。
 そんな経緯から、最初は本社のある刈谷市天王町で全部行っていたのですけど、だんだん手狭になって2005年に小垣江工場を新設し、そこでプレス加工事業を集中的にやりだし、09年に溶接事業などを行う高浜工場、17年に自動車プレス部品用金型を生産する高浜第2工場、22年に単発プレス加工の生産と物流センターとして高浜第3工場を新築。それらで現在、パート社員、外国人実習生を含め240人ほどが働いていて、そのうち25人が障がい者の方と、その割合が多いのがちょっと特徴となっています。
各工場の人員構成
各工場の人員構成


自発的決断で義父の会社へ


 僕の入社は2018年です。もともとは大学院を出た後トヨタ自動車に入社し、生産技術分野で12年働いていました。たまたま結婚したのが当社の社長の娘で、社長の子供は妻のほかに姉と兄がいるのですが、結婚当時、きょうだい3人ともこの会社に入っておらず、会社の後継者が決まっていないということを結婚してから知りました。
 その後、妻が入社して経理の仕事を手伝うことになりましたが、その時点では、僕にも入ってほしいとかは言われなかったですし、僕自身、転職を考えてもいなかったんです。ところが10数年前、妻が「もう、私がやるしかないかな…」と言い始めました。でも、生産の仕組みとか品質、安全管理とかを何も知らず、経理の仕事しかやっていない人間が“社長の娘”というだけで継ぐのは無理でしょう。モノづくりの基礎づくりから始めないといけない。そこから「自分が継ぐ」ということを考えるようになり、これだけの会社なのに継ぐ人がいないのは“もったいない”という思いもあって、ここに入ることを自ら決めました。
 そうして僕は今年で45歳になります。義父はまだまだ健在ですが、うちは9月決算ですので、10月から新しい期が始まる今年のそのタイミングで社長交代が決まっていまして、義父は会長に。義母も経理担当の取締役として入っていますので、妻を含めて4人で一緒にやっていくという体制でおります。

インクルージョンで人と仕事が調和する環境づくり


 中小企業家同友会に入ったのは4年前の2022年です。30代の若手社員が4人一気に辞めてしまったりして「社員の定着に悩んでいる」という話を知り合いの経営者にしたところ、この会を勧められたのがきっかけですね。
 当時、経営理念もあまりはっきりしておらず、「お客様のためになること」だけに焦点が当たっていて、社員に向けたものになっていないということはすごく感じていました。人に優しくできておらず、顔を合わせると愚痴を言い合うような会社だったんです。それじゃあいけないと思い、理念として「よろこばれるものづくり、ひとのわ」を掲げました。
 当然、お客さまに喜んでもらわなくちゃいけませんが、われわれの側も楽しく喜びを感じられるモノづくりにしたい。それには社員一人一人の成長と協調が大事で、いろいろな人、いろいろな立場の人がいると尊重し協調し合えることが欠かせません。特に当社は外国人実習生や障がい者の方が多かったりと、本当にダイバーシティーな状態ですから、うまく回っていくには、人と仕事が調和するようにしなくちゃいけません。ダイバーシティーって、いろんな人が単にばらばらにいるというだけの感じ。そうではなく、その人たちが絡み合って、より良いものになる。相互に関わりながらい良いものを製造する、インクルージョンという言葉を使いたいですね。
 僕は同友会だけじゃなく、いろいろな社外活動をやっていまして、障害者雇用を促進する「ワーク・トモニス」という有限責任事業組合に設立時から関わっています。CREATE WORK 、“ハタラク”を創出するために、3タイプの企業が集まり、連携し協働して取り組んでいるんです。
 会社の中の障がい者の割合は基本1割だと思っています。その理由は、日本全体の障がい者の割合がおよそ1割だからです。会社って社会の縮図であるべきだと思うので、当社でも1割の方が働ける環境を作りたい。社員の中には「何人まで障がい者を増やすんですか」と不安の声も出ますが、社内で多様な人と普通に接し、協力し合って仕事をする機会があることをメリットに感じてほしい。日本にも外国の方がどんどん増えていき、障がい者ももっと活躍できる世の中になっていくでしょう。そうした人たちを特別視しない感覚を会社の中で仕事をしながら自然に身に着けられることを当社の強みの一つにしたいという思いがあります。

エンゲージメントの向上、そして未来へ


 地域との関わりでは、刈谷市が主催する“西三河発のイノベーション創出”の取り組みに参加。「まちい暮らし工房」というBtoCの仕事を立ち上げました。金属加工技術を活かして、真鍮と木材を組み合わせた時計、ネームを掘り込んだ猫の肉球デザインのコースターなどを商品化。ネットで購入できますし、刈谷市のふるさと納税の返礼品に手を挙げているところです。新しい取り組みをしていくことで社員間の会話が増え、エンゲージメントが高まりますので、今後は家具とかインテリア雑貨も――と思っています。
BtoCの新規事業で社員のエンゲージメント向上へ
BtoCの新規事業で社員のエンゲージメント向上へ
 まちい暮らし工房
 そして、10年後を視野に目指したい会社の未来像は、「ひとと機械との協調によるモノづくり」です。
“協働ロボット”というものがあります。柵で囲わず、人がいるところでむき出しの状態で使えるロボットです。人と機械の得意・不得意を分け、ロボットが得意なところ、人では危険が伴うことはロボットに任せるけれど、人も関わりながらモノづくりをするんです。
 例えば、箱の中にごちゃごちゃに入っている状態の部品をロボットが取りに行くのって結構至難の業です。でも、人がそこから取り出してポンポンと並べることは簡単にできるでしょう。そしてその状態なら、ロボットは取りに行くことが得意です。でも、こうしたやり方って、大企業は採算が合わないのでやりません。当社のように、部品1つに対してボルトを1つ取り付けるといった仕事を担う中小企業だからできることだと思います。
 そうした人に優しい働きやすい環境の中で、人に喜ばれるモノづくりをする。多様な人材の雇用に貢献し、地域に愛される会社をつくる。そこを目指して、いま種まき中なんです。

【会社情報】


株式会社町井製作所
本社:愛知県刈谷市天王町2-3
https://machii-mfg.co.jp/