2月28日からの米・イスラエルによるイランへの軍事攻撃以来、世界規模のエネルギー危機が起き、ホルムズ海峡封鎖により、中東からの原油輸入に頼る日本のエネルギー安全保障の脆弱性が改めて顕在化しました。
国際エネルギー機関(IEA)は「需要側(節約)こそ最大の戦略備蓄である」と強調し、各国政府や企業、家庭に、交通・空調・公的機関のエネルギー使用削減を中心に、10項目の緊急行動を示しています。実際に、多くの国では化石燃料の使用抑制の呼びかけ、「テレワークの奨励や義務化」、「公務員の勤務日削減」、「空調温度の制限」、「学校や公共施設の時短」、「公共交通の利用促進と車両利用の抑制」といったエネルギー需要の削減策がとられています。
これに対し、日本政府が行っている備蓄放出やガソリン補助金の支給は、長期的視点で見れば化石燃料からの脱却を遅らせることになります。
エネルギー安全保障を脅かす化石燃料依存から抜け出す解決策は地産地消型である再生可能エネルギーにあります。再エネ導入の加速とともに、使い捨てビジネスモデルからの脱却をはじめ、エネルギー消費自体を縮小する省エネの取り組みも重要です。
わが国のエネルギー自給率は、G7加盟国中最低水準(2023年度15.2%)で、一次エネルギーの8割、電力の7割を海外から輸入する化石燃料に依存しています。わが国の貿易収支を見ると、自動車、半導体製造装置等の高付加価値品で稼ぐ外貨(2024年28兆円)を化石燃料輸入(2024年24兆円)で費消する構造となっています。国産エネルギーの拡大は、国富の海外流出を食い止める観点からも重要です。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、2024年には再エネが世界の新規発電設備増加量の92.5%を占め、年間585ギガワット(GW)分が新たに追加されています。太陽光単独でも過去最高となる453GW分が加わりました。再エネは、すでに世界で新たに導入される発電設備の大半を占めているのです。
現在の世界のエネルギー危機の状況の中で、比較的その影響を受けにくいエネルギー構造となっている国としてスペインの状況を見てみましょう。
スペインは風力・太陽光を中心とした再エネ比率が高く、輸入化石燃料依存が少ないことから、世界的な原油やガス価格の混乱に対して比較的影響を受けにくい構造になっています。
スペインは欧州の再エネ先進国で、2023年時点で国内電力の約50%が再エネ由来です。特に風力が23.5%、太陽光が14%を占め、地理的条件(北部沿岸部の風、南部アンダルシア地方の日照)をいかしています。これにより、中東からの石油・ガス供給に依存する必要が少なく、国際的供給停止や価格急騰の影響を緩和しています。
スペインは早くから再エネ管理のために送電網制御センター(CECRE)を設立し、風力や太陽光をオンラインで監視・調整しています。これにより、需要変動や供給過剰にも対応可能で、停電リスクを低減しています。さらに、蓄電池や揚水発電によるピーク調整も進められています。
政策面では、1990年代からFIT制度(固定価格買取制度)により、再エネ導入を迅速化しました。そして2000年代には風力発電年間導入量で世界第2位、太陽光で世界第1位も記録しています。ただし屋根置き型太陽光など小規模分野はまだ全体の数%にとどまり、PPA(Power Purchase Agreement)による市場モデルで民間導入も拡大しようとしています。
「国家統合エネルギー・気候計画」(2023年度)では、石炭の段階的廃止、太陽光57GW、風力59GW、洋上風力3GWの建設目標を設定し、再エネ比率をさらに上昇させる見通しです。今後適切な政策と技術革新が進めば、2030年の再エネ目標は達成可能とされています。
さらに送電網制御センターやGEMAS(風力発電出力最大許容発電量を予測・制御するシステム)による風力出力予測技術の導入で、系統制御を強化し、FITやPPAの活用により、再エネ電力の安定的供給と投資環境を整備しています。
こうしたことから米・イスラエルによるイラン攻撃などで原油・ガスの供給が不安定化しても、スペインの電力システムは再エネと国内ガス・揚水発電等によりエネルギー安全保障が比較的強固です。この分散型・地産地消型のシステムは、輸入化石燃料依存が高い国々に比べ、価格高騰や供給不足の影響を抑えることが可能です。
一方、2025年4月には大規模停電が発生しました。この原因の一つには、太陽光・風力などインバーター系電源の無効電力調整能力の不足が指摘されており、送電網・系統用蓄電池設備の拡充による需給調整が課題とされています。
今後は、小規模太陽光発電の普及促進、大規模風力・太陽光プロジェクトのタイムリーな実施、洋上風力開発の推進、送電網・蓄電設備の拡充による需給調整力の拡大などが求められます。
スペインは高い再エネ比率、制御センターによる系統運用、政策面での支援により、世界的な化石燃料危機に比較的影響されにくい構造を確立しています。これはスペイン特有の地理的特徴、長年の戦略的政策、技術的対応の組み合わせを反映したものではあるものの、日本を含む他国にとっても再エネ普及や安定供給の参考になるものです。


























