アメリカ・イスラエルのイラン攻撃に伴うエネルギー危機に際し、IEA(国際エネルギー機関)は3月20日には「Sheltering from Oil Shocks(石油ショックからの避難)」というレポートを公表し、政府・企業・家庭がただちに実施できる措置を提示しました。
 IEAの報告書は、道路輸送、航空、調理、産業の4領域にまたがる10の需要側の対策を提示。現実的な需要抑制オプションとして、在宅勤務の奨励、高速道路での速度抑制、公共交通の促進、都市部の自家用車アクセス制限、相乗りとエコドライブ、商用車・配送の効率化、輸送分野でのLPG利用転換、業務フライト削減、現代的調理手段への切替、石化原料の柔軟化と工場の短期効率化を挙げています。
 IEAでは「需要側(節約)こそ最大の戦略備蓄である」と強調。そして3月末、約80ヵ国の政策措置を体系的に集約する「2026年エネルギー危機政策対応トラッカー」を公開しました。これによると各国は様々な省エネ対策などを実施しています。
 一方、日本はガソリン補助金など“価格抑制”に偏っており、これは巨額の財政負担を伴い、市場をゆがめ石油依存を固定化し、危機の根本解決につながりません。日本は石油備蓄を厚く持っているので、短期的リスクとしては、量の不足そのものより、輸入価格上昇と、それが企業収益・家計負担・物流費・物価へ伝播することにあります。今後のエネルギー安全保障の観点からは、省エネの強化・再エネ拡大・化石燃料依存の縮小が求められます。
 IEAがまとめた各国の対応を見ると、需要抑制策と家計支援策の両面で多様な政策が取られています。 特に、省エネ・行動変容を促す政策が広く導入されている点が特徴です。

⑴需要抑制策(短期的な危機対応)
 IEAの追跡によれば、以下のような措置が多くの国で実施されました。
•在宅勤務の奨励・義務化(11ヵ国) → 通勤による石油消費を削減。
•エアコン温度制限(5ヵ国)
•公務員の移動制限(11ヵ国)
•学校の休校・時短(5ヵ国)
•消費者への需要抑制要請(20ヵ国)
•車両使用制限・速度制限引き下げ・公共交通促進(18ヵ国)
 例えば韓国では公務員の週2日運転禁止、企業への使用量削減要請など、強制力のある省エネ策が導入されました。

⑵家計支援策(価格高騰への対応)
•燃料価格上限設定(14ヵ国)
•燃料補助金(9ヵ国)
•エネルギー税の軽減(27ヵ国)
 多くの国が税軽減や低所得層支援を組み合わせ、補助金依存を避けつつ負担軽減を図っています。それに対して日本はガソリン価格を1㍑170円程度に抑えるため、元売り企業への補助金を中心に対応。IEAが推奨するような省エネの義務化・行動変容策はほとんど導入されていません。日本の政策は化石燃料依存を強める方向のものが多く、危機対応としては不十分。下の表は各国と日本の対策を比較したものです。

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 IEAや各国の動向から、日本が取るべきエネルギー危機対策の方向性は明らかです。

⑴省エネ・需要抑制の本格導入
 IEAでは省エネが「第一の燃料」との位置づけ。日本でも、在宅勤務の奨励、公共交通利用促進、空調温度の適正化、企業へのエネルギー使用削減要請が求められる。

⑵再生可能エネルギーの急速拡大
 再エネは初期費用が低く、迅速に普及可能で、危機に強い。特に日本はホルムズ海峡依存度が90%と極めて高く、再エネ拡大は安全保障上も必須。

⑶化石燃料補助金の段階的縮小
 IEAやG7は非効率な化石燃料補助金の廃止を求めている。補助金は短期的には価格抑制効果はあるものの、長期的には化石燃料依存を固定化し、財政負担も大きい。

⑷低所得層への直接支援への転換
 価格全体を下げるのではなく、 脆弱層へのターゲット支援に切り替えることで、財政効率と公平性が高まる。

⑸エネルギー安全保障を軸にした産業政策
 蓄電池・送電網への投資、省エネ家電・断熱改修の普及、EV・ヒートポンプの導入支援など。

 世界各国は、エネルギー危機を単なる価格高騰ではなく、化石燃料依存の構造的リスクとして捉え、 省エネ・再エネ・行動変容を中心とした政策を展開しています。一方、日本はガソリン補助金に偏り、危機の根本原因である化石燃料依存の解消に踏み込めていません。
 日本が今後取るべき道は、「省エネ強化 × 再エネ拡大 × 補助金改革」 という国際標準のアプローチであり、これこそがエネルギー危機に強い社会をつくる鍵となります。