八:肥後(熊本)の地震や下総房総(千葉)の豪雨は酷かったらしいな。江戸の頃も、富士や浅間が火を噴いて江戸に灰が降るわ、ナマズの野郎が暴れるわ、酷かったけどな。それにどこへ行ってもこの暑さ…。
熊:江戸の方がちっとはマシだったんじゃねぇか。さすがに寝てられないんで、酒を飲むしかねぇ。
八:があっても飲む理由にしやがる(パシっ)。
蔦重:江戸では火事には火消しの連中が、世のため人のためっていって躰をはる。令和の世でも、火消し(消防)や十手持ち(警官)や侍ども(自衛隊)の連中が躰はって民草を助けようとする。感心だな。
八:民草同士が助け合うボランティアって連中が「お互い様だから、助け合うのは当たり前だ」と言うのは、今も人情は絶えていないと、泣けてくるぜ。
熊:奉行所(役所)の連中も寝ずに頑張ってるしな。
蔦重:それにしても、お盆を過ぎてもまったく秋の気配のけの字もねぇな。「秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる」って、いつの話だよ。
古琴:さすが耕書堂。『古今和歌集』の藤原敏行だね。ほんと風の気配もないね。
八:皆が暑くて寝られねぇと言ってる中で、首席家老の姐さんは一刻半しか寝ずに働いているってのはホントかね、バケモンだね。
熊:姐さんは毎日、城中で「働いて、働いて、働いて、働いて、働いて、働いて」。休日も家屋敷で奥方として「働いて、働いて、働いて、働いて、働いて、働いて」いるってやつか。ご苦労なこった。家老なのに過労しない、なんてね。
八:(パシっ)
蔦重:仏藩のナポレオンという殿様も、毎日一刻半しか寝ねぇで戦して、周りから英雄と呼ばれたそうだ。
八:姐さんのは、単なる自慢話に聞こえてしまう…。
熊:人徳かね。
蔦重:寝不足で、まともな分別がつくのか、そっちが心配だぜ。消費税とやらの話もどうなるのかね。税を多少軽くしても、2年後には元へ戻すってんだから、よくわからねぇ。ただでさえ、日の本は借金漬けだそうだし。
古琴:目先の税を軽くしても、次の世にツケを回すだけ。人気取りの愚策だが、言った手前、引くに引かれないのかね。撤回の勇気ないように見えてしまうな。
蔦重:江戸っ子だったら「潔くしろ!」って怒鳴られるところだけど、奈良の姐さんはメンツを気にするのかな。

春は桜、夏は花火、潔く咲いて、潔く散る



古琴:ところでお前さんたち、暑いといって江戸を離れたそうだね。
八:隅田川の花火より数段上の花火があるって聞いたんで、越後の国は長岡藩へ行ってきやした。無茶苦茶暑かったけど、すげぇ花火で度肝を抜かれましたぜ。
蔦重:北斎や歌麿を連れていきたかったですね。もっとも、「裸の大将」山下清の切り絵の『長岡の花火』を知りましたけど、あれは面白い。
古琴:長岡の花火は、「令和の三大花火」の一つだよ。
八:光と音が一糸乱れず次々と花を咲かせる。
古琴:工芸がサイバーフィジカルシステム(CPS)になったと言えるね。
八:なんですかそれ。
古琴:失礼した。いずれ説明しよう。
蔦重:何百もの花火を見聞きしていたら、日の本は、やはり「春の桜と夏の花火」だと感じやした。パッと咲いて、パッと散る。花の咲くのも見事だけど、散り際もこれまた見事。
古琴:「美しさ」と「はかなさ」だな。次々と打ち上げられ、次々と花開く。同心円もあれば、あえてずらした異心円もある。単一円もあれば、多重円もある。そして、何より「間」だね。連続の合間の微妙な「間」。空間の「間」もあれば、光と音との時間の「間」もある。絶妙な刷り合わせだね。まさに日の本の美学と言える。
八:「間」がずれるのを「間違い」ってんだな。
熊:いや、「間抜け」だ。
八:それはオメエだ(パシっ)。花火と花見は、江戸っ子には堪らねえ「粋」だぜ。
熊:貯まらねぇのは、俺の金。
八:(パシっ)
古琴:江戸の花火は、奢ることなく技芸として時代と共に進歩しているけど、その一方で「粋の粋」は日の本らしく、しっかり続いているわけだ。

国大にして戦いを好めば必ず亡ぶ



蔦重:「山本五十六記念館」にも寄りやした。長岡出身の日の本一の水軍の侍大将だと聞いたんでね。「国大にして戦いを好めば必ず亡ぶ」と言ったそうで。
古琴:加えて「国安らかなりといえども戦を忘れなば必ず危うし」と言う。中国の兵法書『司馬法』の言葉からきているね。泰平の世でも備えを怠ってはならない。だが、それ以上に戦を始めてはならぬ、という意味だ。大将としての戒めだな。
熊:今の戦はすげえな。ドローンってカラクリ人形が、傀儡の糸を誰かにひかれなくても、勝手に空飛んで敵に体当たりくらわすってぇじゃねぇか。大工としては興味あるけど、物騒極まりないな。
蔦重:名言がもう一つ。「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」。ヒト育ての名人だったそうで。
熊:オレ達職人も同じだな。親方に、怒鳴られて、殴られて、怒鳴られて、殴られて、怒鳴られて。金槌で叩かれたことも一度じゃねぇ(苦笑)。
八:お前は酒飲んで寝てるからだよ。
熊:(パシっ)
蔦重:米藩のトラ殿様も、戦をしかけたけど、始末がつけられないようですね。
古琴:自らの言葉と策に自縄自縛されてる感じがするね。
熊:自縛が自爆になったりして。
八:(パシっ)
蔦重:トラ殿様は駆け引きが得意なので、それでイラン藩を叩けると考えていたらしいが、それで躓いている。首席家老の姐さんも同じ。城中の寄り合いには出ずに、他の重臣の話に耳を傾けず、自分の自慢話はあちこちでしている。強気で突っ張るのが得意だったが、それをやり過ぎて躓きそうだ。トラ殿様と仲良しだけに、どうも似てきたようですね。
古琴:「策士、策に溺れる」「才子、才に倒れる」っていう。どちらも言った手前、後に引けなくなって難儀することだ。
八:民草は大言壮語には飽きてきた。どちらも偉そうにツッ張るけど、実際は酷くなりそう。そのたびに、他人のせいだと言い訳する。だから世間の評判は段々悪くなる。
蔦重:「飽き来ぬと目にはさやかに見えねども 支持の下落にぞおどろかされる」ってことになりそだな。
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 毎度の戯れ言・与太話、お粗末さまでございました。