少し回り道になるが、今回の選挙結果を広い目で見てみた。
1712年、イギリスのダドリー城近郊にニューコメンが人類初めての蒸気機関を試作して以来、人間は生存のための機械とそれを使いこなす社会システムを、400年間にわたり懸命に作り上げてきた。その結果、1990年にその目的を達し、共産主義はその存在価値を失って崩壊していった。
それから35年、日本人は徐々に400年の人類の努力がようやく終わったことを実感した。そして寒波の中で国政選挙の投票に向かい、自民党の候補者に投票してきたのである。その結果、自民党は316議席(3分の2以上)を獲得し、日本社会は近未来の日本を作る力を得た。それは必然である。
人間の生存を脅かしていた食糧や生活必需品は、ほぼ全世界に順調に供給されるようになり、そのための努力、戦いは鎮静した。激しかった右翼と左翼の戦いも終わり、「中道」という概念は1990年に消滅していたが、35年を経てようやく共通の認識となった。また「もう少しこうなったら良いのに」という小さな改善を目指した野党の必要も無くなった。
日本、いや人類は新しい時代に向けて走り出したのである。
では、どこに向かっているのだろうか? 2つの道を進みつつある。1つは頭脳の追放だ。
人類はこの400年間、「人間の筋肉を追放する」(動力とその制御)という作業をしてきたが、次の段階として「人間の頭脳を追放する」という目標に向かっている。
それが“ITとAI”である。それはまるで人間そのものを不要にする努力のように見える。つまり著者が30年ほど前に書いた論文での表現を繰り返せば、「科学は人間を廃人にするべく懸命の努力をしているのではないか?」ということになる。
朝起きても、井戸水を汲みに行く必要はない。昼に仕事に行かず、夜も何もせずボンヤリと過ごす――。これでは、人間はただ息をしているだけだ。廃人のようにグッタリと椅子に座り、空な目で道路を見る。人間から、生きていくのに必要なことも、その存在を有意義にすることも、すべてが奪われてしまう。
でも科学だけはさらに先を進むだろう。AIの開発と浸透が終わると量子科学が控えていて、時空を超越したり、生命を蘇らせるようになる。生きる意味がない人も存在はするのだ。それを目の前にして哲学者も科学者も、そして芸術家ですら「金」の世界でもがいている。
教義「力・知性・神」
ところで、人類が大失敗していることがある。そのために我らの運命は悲惨なものとなった。それをもたらしたのは未熟な人類が生み出したドグマ、「力、知性、神」である。
この3つを尊重した文明は、ヨーロッパ、シナ、そしてイスラムで誕生し、それらが世界を席巻した。まさに世界の8大文明のうちの最悪の3つに世界は支配されたのである。
そうして人類は「力が正義である」と錯覚し、殺戮と征服が繰り返され、人類文明が4万年を経ても、まだ止まない。「力」の次は「知性は尊いものである」と思い、あらゆるウソ、欺瞞を作り出して、さらに人の尊厳を傷つけ、金銭に価値をつけ、人を差別をするのに懸命である。さらには、自分だけを守る「神」を創造し、架空の対立を深めている。
既に人類が悠々と生存できるだけの物質やシステムを保有しているのに、今だに受験戦争や出世競争、それに国家間の殺戮を続けているのは実に滑稽である。
[E:「日本文明」という光}
でも遠くに光は見える。人類には「力、知性、神」の代わりに「和、心、自然」を信じる「日本文明」があるからだ。
世界8大文明のうち「一国一文明」はこれだけであり、隣接するシナ文明からはっきりと独立している。漢字や都市構造などから日本文明はシナに従属していると錯覚されていたが、近年では文明研究が進み、日本がシナから影響を受けたのは2世紀から5世紀に限定されており、むしろ日本の文明がシナに与えた影響の方が圧倒的に多いとされる。
不運にも世界は「力、知性、神」を選択し、約1万年の長きに渡って「殺戮、差別、肉体」だけの社会を築いてきたが、ようやく最近になって我々の社会が理想とする状態から遥かに離れていることに多くの人が気付き、ヨーロッパですら「和、心、自然」の日本文明に向かおうとしている。
「筋肉、頭脳」から変化していく人類の進歩、そして強者や嘘つきが支配する社会から離脱しようともがいているが、残念ながら1990年からの日本人は処理できないほどの情報に惑わされ、咀嚼できなかった。そして日本人は近未来の国家思想も持たず、学者も哲学を持たず、指導層は嘘をつき、子供は意味のない学業に苦しんできた。
もちろん、その間も日本の政治は自民党を中心とはしていたが、種々雑多の野党の存在などによって国会も混乱の淵にいた。
そうして毎日の生活のみに追われ、ただネズミのように動いていた国民は、ついに2026年初頭、目指す社会と現実社会とのあまりの乖離に気がつき、自民316議席の選択をしたと考えられる。



























