文部科学省が作成した文書の冒頭に、こんなメッセージが入ったのは、おそらく初めてのことではないだろうか。
 去る2月13日に発表された「高校教育改革に関する基本方針(グランドデザイン)」の第1㌻に大書されているのは、「2040年の未来を担うみなさんへ」と題した呼び掛けだ。
[2040年、世界は、今からは想像もできないものになっているでしょう。
 どのような世界であっても、社会の一員として持てる力を発揮し、2040年を動かしていく― その主役がみなさんです。
 心惹かれることに打ち込み、夢や希望を持って様々なことに挑戦し、自分自身の理想を追い求め、多くの仲間と協力し、日本や世界の未来をつくっていくことを願っています。
 社会へはばたくみなさんの背中を力強く押せるよう、今こそ、高校を進化させていきます。]
 普通なら、こうした文書は全国各自治体の教育委員会職員や各学校の教職員へ向けて書かれる。それが、当事者である高校生たち、そしてこれから高校生になるはずの子どもたち全体にも、「あなたたちの通う高校は、未来へ向けてこんなふうに変わるんだよ」と示すのは、とても良い試みだと思う。
 しかも2㌻目以下の本文も、難しい教育専門用語の羅列ではなく、高校生だったら理解できるような書き方になっている。ということは、国民の皆さんにも十分わかる内容だから、納税者への説明責任を果たしてもいるわけだ。
 2040年という14年後の近未来を明確な目標に掲げ、
①少子高齢化、生産年齢人口の減少、地方の過疎化についての一層の深刻化 
②AIが様々な情報を処理する時代
――だと予測する。
 その上で、高校教育改革により、高校が、「未来の労働市場、地方経済において社会の『イノベーションを興す力を底上げする起点』としての役割を果たすことを目指す」としている。
 なるほど、2040年にはもはや存命していないと思われる高齢者のわたしにも、この論理は理解できる。
 少なくなった生産年齢人口の労働力で高齢者の福祉を支えてもらうためには、新しい時代に適合する生産能力の開発、伸張が欠かせない。
 また、現在においてですら、小学生でも使いこなすと聞くChatGPTなるものは旧世代のわたしには理解不能なのだから、日進月歩の勢いで進化するAIがどれくらい社会の在り方を変えるのかは予測すら難しいのではないか。
 従来の尺度で考えていたのでは到底間に合うまい。今こそ何よりも、未来へ向けての対応が必要だ。
 そのことを「グランドデザイン」は強く印象づけてくれるとともに、改革の重視すべき指針として次の3つの視点を挙げている。
〈視点1〉不確実な時代を自立して生きていく主権者として、AIに代替されない能力や個性の伸長
〈視点2〉我が国や地域の経済・社会の発展を支える人材育成
〈視点3〉一人一人の多様な学習ニーズに対応した教育機会・アクセスの確保
 そして、これらに基づいた将来の高校像とともに、それを実現するための取組の方向性を具体的に提案する。結びの部分では、
①職業教育の高度化・魅力の強化 
②普通科の在り方の転換・魅力の強化 
③多様な学びの確保
――に関して、2040年までに達成を目指す数値目標まで掲げているのだ。文部科学省の並々ならぬ熱意が伝わってくるではないか。
 検索すれば、文部科学省ホームページで21㌻に及ぶ全文が読めるし、簡単に知るためには4㌻にまとめた「骨子」や、カラフルなイラストも交えた2㌻の図解資料で示す「概要」もあるので是非ご覧いただきたい。これまでの高校のイメージが大きく変化していくだけでなく、われわれ大人が直面すべき未来への課題も見えてくるはずだ。
 政治家の議論やマスコミの報道がそちら中心になってしまっているので、ついつい物価高騰とか戦争の危機とか、現在直面する問題にばかり目がいってしまう昨今だが、未来がどうなっていくかについても、しっかりと考えてみたい。
 それは、子どもたちへの責任を果たすだけでなく、われわれ自身の行く末にも結びついてくるのだから。