[最悪の日韓関係]とされた時代、2017年の文在寅大統領就任から20年の安倍晋三首相退任までの3年余りが最もひどかった。元々、学生時代は民主化闘争の闘士であり逮捕経験もある文在寅は、リベラルな姿勢で知られている。一方、ご存知のように安倍首相は、就任早々にあえて靖国神社参拝を行うなど、強硬な保守派だ。良好な関係になるわけがなかった。
果たして、文在寅政権誕生の翌日に行われた電話会談で文在寅大統領は、15年に当時の朴槿恵大統領との間で結ばれた慰安婦問題日韓合意に関し「韓国国民の大多数が心情的に合意を受け入れられないのが現実」と発言するなど、日本への批判姿勢を明らかにする。徴用工問題についても、「日本の政治指導者が政治的な争点とし、問題を拡散させている」として頑なな対応に終始した。ただ、安倍首相の退陣後は、両国とも新型コロナウイルスへの対応に追われる中、互いの関係は小康状態となる。
22年に就任した尹錫悦大統領は、文在寅政権時代に悪化した日韓関係の改善を大統領就任前より強く提唱していたこともあり、岸田文雄首相に対し「元徴用工訴訟」に関する解決策を提示するなど関係修復に動く。23年には、安倍政権以来途絶えていた日韓首脳間の「シャトル外交」を11年5ヵ月ぶりに再開。現在の李在明大統領も、石破茂首相や高市早苗首相との「シャトル外交」、首脳会談を頻繁に重ねているため、現時点では険悪な状態を脱してはいる。
しかし、岸田、石破、高市の側から歴史認識に関する「反省とお詫び」発言がなされていない以上、表面上の当たり障りない範囲の友好関係どまりだ。未来へ向けての前向きの関係は成り立っていない。このままでは、真の意味での友好国にはなり得ないだろう。
といって、政界を見渡しても、日本政府の枢要な職に就きそうな政治家で、河野、「河野談話」を出させた宮澤、村山、小渕、鳩山のように「反省とお詫び」を口にできそうな者はいない。自民、維新、国民民主、参政、保守といった右寄り政党には皆無だし、その他の政党は連立も含め政権を取れる見込みが著しく乏しい。
なにより、その口から「反省とお詫び」が飛び出す可能性ゼロの高市首相である。先の戦争についてすら、「少なくとも私自身は、当事者とは言えない世代ですから、反省なんかしておりませんし、反省を求められるいわれもないと思っております」と95年の衆議院外務委員会で発言しているし、前回紹介した同年の「村山談話」が植民地支配や侵略への謝罪を行ったことも強く批判している。
そんな首相が衆議院選挙で圧勝し、中国に喧嘩を売る発言をしたり日本に住む外国人を邪魔者扱いする政策を打ち出したりしている現状を多くの有権者が支持している有様では、当分の間政治家には何の期待もできない。
ならば、政治の場にそれを求めるのではなく、まず、この社会の中で暮らすわたしたち自身が、韓国の社会で暮らす人々との間に強固な友好関係を築いていく方が早いのではないかと考える。
国民レベルでは、20年以上にわたる文化交流の歴史があるのだ。互いの国の映画、ドラマ、アニメ、漫画、音楽…といった芸術文化活動に親しみを持つ層は、若者から高齢者まで男女を問わず広がってきている。彼らは、日本と韓国がさらに友好関係を深める方向に賛同してくれる可能性が高い。
ただ、こちらの場合でも、歴史認識は欠かせない。過去の悪かった点について、国家の責任者のように「反省とお詫び」とまではいかなくても、申し訳なく思う気持は必要だ。
とはいえ、〈歴史の勉強をする〉となるとハードルが高くなり、躊躇してしまう向きのあるのもわかる。
その意味で、2023年に公開され、20万人近くもの観客を集め大きな話題となった映画『福田村事件』の存在は大きい。1923年の関東大震災において、混乱の中行われた虐殺行為の被害者の大多数が朝鮮人だったという史実を、映画表現を通して現在の多くの日本人に理解してもらうことができた。
この方法で、もっと多数の歴史的事実を広く知らしめることができないかと思い、今度は日本統治下の朝鮮半島で行われた「創氏改名」政策について映画にする試みに挑みたい。
朝鮮人に日本式の姓名を名乗らせようとした「創氏改名」政策は、高校の教科書に載っていることもあり、その名称だけは認識している人が多い。だが、いつ、どんな形で具体的に実施され、朝鮮の人々にどんな苦痛を与えたかは知られていない。朝鮮半島全域で全員が対象となった政策だけに、その歴史的事実を韓国人と共有する意味は極めて大きいと考えるからだ。
日本と友好的でなかった文在寅大統領はもちろん、日韓関係を良くしようという姿勢を示した尹錫悦大統領でさえ、慰安婦、徴用工問題の根本でもある植民地支配への「反省とお詫び」だけは譲れない一線だと明言している。24年の政変で尹錫悦政権を打倒し25年に就任した現在の李在明大統領は、文在寅の流れを汲むリベラル派で反日意識が強いのではないかと心配されたにもかかわらず、現在のところ友好的な立場にあるものの、歴史問題を有耶無耶にすることは許さないだろう。
現在のこの国の政治家たちが過去の歴史を直視し、反省やお詫びの気持を表明する気がないのなら、われわれ国民が韓国国民に対してそうすることによって、李在明大統領が掲げる日韓の〈共助〉によるあらゆる面の真の協力関係を実現しようではないか。






























