2017年に17%だった電力供給における再エネ比率は、23年に約38%、24年には40%近くに達し、電源構成は劇的に変化しています。「資源大国」から「再生可能エネルギー大国」へ、石炭の国から太陽と風の国への大転換が進行しているのです。
政府の野心的な政策と、州ごとの多様な取り組み
30年までに再エネ比率82%(これはドイツの80%を超える野心的な目標です)、40年までに石炭火力のほぼ全廃を掲げ、エネルギー転換を国家戦略として推進しています。
これらの目標を達成するため、送電網の大規模改修、蓄電池・揚水発電の拡充、再生可能エネルギーゾーン(REZ)の整備、キャパシティ投資スキーム(CIS)など、政策的支援を体系的に進めています。
25年5月の選挙で政権党の労働党が勝利を収めたので、オーストラリアの再生可能エネルギーへの急速なシフトは今後も続くこととなるでしょう。アルバニージー首相はその勝利演説で、再生可能エネルギーは「我々の経済の未来のために共に取り組むべき機会である」と述べています。
再エネ導入の進展は州によって大きく異なります。
タスマニア州は水力を中心に再エネ比率98%を達成し、南オーストラリア州は風力・太陽光・蓄電池の組み合わせにより、風力と太陽光の割合が約74%に達しています。一方、ノースサウスウエールズやクイーンズランド、ビクトリア州など東部州ではまだ石炭火力の比率が高いものの、再エネの導入は急拡大しています。
注目されるのは、タスマニア州とビクトリア州を結ぶ高圧直流連系線によってタスマニア州の水力発電と揚水発電のポテンシャルを最大限に生かして、太陽光と風力を電力システムに最適に統合する「Battery of the Nation」構想です。これは再エネの変動性を吸収し、全国規模で安定供給を実現する基盤となります。
南オーストラリア州では、24年の99日間(年間の27%)にわたり、風力、太陽光、バッテリーが州の電力の100%を供給しました。州内の約50%の住宅が屋根上太陽光発電を備え、風力、太陽光、メガバッテリーの電力を組み合わせると、非常に安価であることを実証し、世界の再生可能エネルギー経済のモデルとなっています。
屋根上太陽光発電と家庭用バッテリーの普及
オーストラリアは国土が広く人口も希薄なので、事業規模の太陽光発電プロジェクトが多いと思われがちですが、実は太陽光発電の多くが家庭の屋根上に設置されています。広い家が多く日照も強いので、一般家庭の発電量が国全体の太陽光発電の大きな部分を占めています。
日照条件の良さと電気料金の高さが自家消費のインセンティブを高め、出力抑制の低減にも貢献する普及が後押しされています。23年時点で400万基以上、累計20GWが導入され、さらに24年には家庭用バッテリーが7万5000台設置されるなど、分散型電源と蓄電の組み合わせが進んでいます。政府は30年までに100万台の家庭用バッテリー導入を目指し、需要ピークの抑制と系統安定化を図っています。
再エネ大国化の背景と経済戦略
オーストラリアが再エネ転換を急ぐ背景には、国際的な脱炭素圧力に加え、豊富な太陽光・風力資源と、リチウムなどの重要鉱物資源を活かした新産業育成があります。政府は「Critical Minerals Strategy」「Hydrogen Headstart Program」「Solar Sunshot Program」などを通じ、グリーン水素、グリーンスチール、グリーンメタルなどの輸出産業化を狙っています。鉄鉱石を現地で水素還元し、付加価値の高い「グリーンスチール」として輸出する構想は、現在の鉄鉱石輸出の3倍の市場規模が見込まれています。
急速なエネルギー転換にはもちろん多くの課題があります。送電網整備の遅れ、技術者不足、系統の不安定化、電力価格の変動などが指摘されています。再エネ比率82%の達成には、蓄電池・揚水発電の大規模導入と送電網の強化が不可欠です。また、重要鉱物の精錬・加工の国内回帰や、中国依存の低減も戦略上の課題です。
それでも、政策の継続性と豊富な自然条件を背景に、オーストラリアは世界に先駆けて再エネ主体の電力市場を確立し、クリーンエネルギー輸出国としての地位を築くことに注力しています。
日本との関わり
エネルギーに関する両国の深い依存関係を考えると、オーストラリアがクリーンエネルギー大国に向けて活発に動き始めたことは、日本の経済転換とエネルギー転換に大きな影響をもたらします。
日本は長年、オーストラリアから石炭・LNGを輸入してきましたが、今後はクリーンエネルギー分野での協力が重要となります。オーストラリアが再エネ大国へ転換する一方、日本が化石燃料中心の政策を続ければ、両国のエネルギー転換にギャップが生じる懸念もあり、相互理解と連携の深化が求められる局面に入っています。



























