日本初の女性首相がまさに難産の末にようやく誕生することとなった。
 去る10月21日、衆参両院本会議での首相指名選挙で高市早苗自民党総裁が第104代首相に選出された。しかし改めて言うまでもないが、盤石の態勢の中での首相就任とはとても言えないだろう。そもそも首相指名選挙自体が、まさに薄氷を踏む状況での勝利だったことは誰の目にも明らかだ。
 とは言え、政権発足時の高市政権に対する国民・世論の評価はかなり高く、例えば読売新聞社が10月21日から22日にかけて実施した世論調査では、71%にも上る内閣支持率をたたき出している。筆者の見るところ、この高い内閣支持率は、高市政権誕生によって生じるであろう「変化」に対する期待感の高まりが数字になって表れたのではないだろうか。
 つまり高市首相だったら、この閉塞した状況を変えてくれるはずだ、という国民の大いなる期待が数字となって表れたのだろう。
 いずれにしても日本の政治情勢は、確実に大転換期を迎えつつあることは間違いない。26年間に及んだ自公連立政権が突如として終焉し、比較第一党である自民党の連立パートナーは日本維新の会に入れ替わってしまったのである。その間わずか10日余りという目を剥くばかりの急展開ぶりだ。
 日本の政治情勢は、これまでの政権交代可能な二大政党制を指向していた時代から、間違いなく多党制、あるいは多党化の時代へとシフトしつつあると言っていいだろう。
 前述したような政治状況が鮮明になったのはやはり昨年、2024年からだった。かつてはわずか15人の国会議員を抱える弱小政党だった国民民主党が、「手取りを増やす」をキャッチフレーズに昨年の衆院選で一大ムーブメントを巻き起こし、大躍進を遂げたのだ。この国民民主党の勢いは今年に入っても止まらず、今夏の参院選でも大幅に議席を増やし、トータルで50議席を擁する野党第三党に躍進したのである。
 その一方で参院選に入った段階では、わずか5議席しかないミニ政党だった参政党だが、夏の参院選を経ると衆参両院で18議席を確保し、政治的に無視できない存在にまで一気に党勢拡大を果たしたのである。
 こうした多党化の時代を迎えると、一つの政治勢力が議会の中で過半数を占め続けることが難しくなってくる。つまり野党の協力を取り付けなければ、法案や予算案を可決、成立させることができないのだ。こうした状況は、昨年の衆院選以降われわれが見続けてきた光景だ。
 高市自民党も日本維新の会との連立を組むことによって、ようやく政権発足に漕ぎ着けたものの、それでも衆参両院で過半数は確保できていない状況にある。恐らく高市政権は、日本維新の会だけでなく国民民主党とも連携していくことで政権維持を果たしていくことになるだろう。そうした意味で政権運営にあたっての不安定さはまだしばらくついて回ることになろう。
 しかしだからと言って、高市政権に何の展望もないかと言うと決してそんなことはない。なぜならこの多党化の時代の中で、野党の役割もかつてとは全く異なったものとなっているからだ。
 多党化の時代が到来したことによって、野党もまた自らの政策実現のチャンスを得たのである、政府与党に対してかつてのような対決一本槍の野党は有権者からそっぽを向かれて、いずれ消滅していくことになろう。それこそ国民民主党のキャッチコピーではないが、「対決より解決」というスタンスで政府与党と向き合わなければ、自党の存在意義を発揮できないはずだ。しかし、あまりにも政府与党に近づきすぎてしまうと、単なる補完勢力と見なされて特色を失うことになってしまうだろう。
 そうした意味で各党は、自らの立ち位置をどこに定めるかに、今後苦心していくことになろう。
 いずれにしても──公明党の連立離脱から日本維新の会の連立与党入り、とは言っても、いわゆる「閣外協力」ではあるが──までの大政局を経て、政治をめぐる風景が一変したことは間違いない。取りあえず日本維新の会の思い切った決断は、今のところ同党にとってプラスに働いていると言っていい。
 一方、昨年の衆院選以降、一連の大政局の中で存在感を発揮し続けてきた国民民主党は、日本維新の会にその座を取って代わられてしまったようだ。まだ取りあえず野党第一党の座をキープし続けている立憲民主党は、政局の主導権をなかなか握ることができずに、脇役の座に追いやられたままだ。このため、党分裂の危機に陥っているのが実情だ。
 どうやら日本の政治情勢が落ち着くまでには、まだしばらく時間がかかりそうだ。この点だけは、まず確実だろう。