いよいよホルムズ海峡封鎖の影響がここへ来て本格化してきたようだ。
原油を原材料とするさまざまな製品の価格が上昇したり、その入手が困難な状況に陥りつつあるのが実情だ。
原油を精製することで、さまざまな石油製品が生産される。重油、軽油、ジェット燃料、灯油、ガソリン、LPガスといったところが、その代表的なものだろうか。原油輸入の9割以上を中東に依存する日本にとってみれば、ホルムズ海峡封鎖の影響はあまりにも大きい。海峡封鎖が長期化したならば、上記の様な石油関連製品の価格上昇はもちろんのこと、その供給が途絶えることだって充分視野に入ってくるだろう。
例えば3月中旬にこんなことが発生し、メディアを賑わすことがあった。兵庫県下の製菓メーカー、山芳製菓が同社の主力商品であるポテトチップス「わさビーフ」の一時生産停止に追い込まれたのである。それというのも、ジャガイモを揚げる際に必要となる重油が調達できなくなったからにほかならない。その後、一定量の重油の確保にメドがつき3月23日には生産を再開させたものの、今後順調に重油を確保することができるかどうか、まったく見通しが立たない状況となっている。
重油に限らず、原油を精製して生産される軽油やガソリンなどの石油関連製品は、そのどれもが流通量自体が減っているのが実情だ。それというのも石油関連製品を生産している石油元売り各社が、ホルムズ海峡封鎖が長引くことを想定してその出荷量を制限し始めたからだ。
流通量が減少することになれば、当然のことながら価格も上昇していくことになる。改めて指摘するまでもなく石油価格の上昇はあらゆる製品、商品の価格上昇に直結していくことになる。この価格上昇は、コストプシュ型のインフレであるため、日本経済にとってはマイナスの影響しかもたらさない。
確かに昨年末の段階で、日本には官民合わせて245日分の石油備蓄量があるとされる。仮に今後もホルムズ海峡の封鎖が続いたとしても8ヶ月程度は何とか耐えられる計算だ。そしてその間に戦争が終結したならば、理屈の上では石油関連製品の供給には何ら影響は生じないはずだ。しかし実際には、そうはならない可能性が高い。特に供給サイドは、最悪のケースを想定して動くからだ。
事実、石油元売り各社は海峡封鎖が長期化したならば原油不足が深刻化すると見て、販売先を選んで出荷量を制限する動きに出てきているのが実情だ。
そもそも経済安全保障の観点からすれば、前述したように原油に関して国内消費量のうち9割以上を中東に依存していること自体が、はっきり言って異常だ。いずれにしてもなぜこんな異常な状態がこれまで続いてきたのか、徹底的な検証はどうしたって必要だろう。
原油を生産している国・地域は、何も中東だけではない。特に注目すべきなのは、アメリカの存在だ。アメリカはシェール革命以降、原油に関して純輸出国となった。
実をいうと、住友商事や三菱商事などを中心に民間が主導する形で、シェールオイル・シェールガスの日本への輸入に動いたことがかつてあった。しかし米国産のシェールオイル・ガスを輸入するといっても、簡単には実現しない。その輸送ルート、パイプラインや積み出し施設などを整備しないことには、現実問題として輸入することは不可能だからだ。その点に関していえば、米国産の旧来型の原油、例えばアラスカ産のものに関しても同様だ。
日本にとってアメリカは最も重要な同盟国であるにもかかわらず、こうしたアメリカからのエネルギー輸入に関しては、日本政府はかなり鈍かったと言っていい。むしろロシアとウクライナとの戦争前までは、日本政府のロシア重視の姿勢は顕著だったのだ。
しかも日本政府のエネルギー政策は、ここ近年石油よりも天然ガス重視の方に大きく傾斜していったのが実情だ。もちろんその背景には、環境問題、すなわち温室効果ガス対策の側面が強くあったためだ。
例えば、ロシアの北極海に面したギタン半島で、日本が主導する形で天然ガス開発プロジェクトが大々的に進もうとしていた。しかも現地に天然ガスから水素を精製する工場を建設し、その水素を北極海航路で日本に運びこもうとするビックプロジェクトが立ち上がっていたのだ。改めて言うまでもなく水素は、燃焼しても二酸化炭素を発生しない、環境にやさしいエネルギーなのだ。
しかしそのプロジェクトも、ウクライナ戦争によって完全に頓挫してしまったというのが実情だ。
こうした状況などを受けて、日本のエネルギー戦略は抜本的な見直しを迫られているが、今やるべきことは目先の原油確保ではなく、中長期的な視野に立った日本のエネルギー戦略全体の見直しではないだろうか。仮にホルムズ海峡の封鎖が長期化しなかったとしても、エネルギー戦略の見直しは絶対に早急にやるべきだろう。九割以上の原油を中東地域だけに依存するというのは、どう考えても異常であることは間違いない。



























