中国の国家統計局が3月16日発表した2026年1―2月の小売売上高は、前年同期比2.8%増加とのことである。国泰君安国際の周浩チーフエコノミストは、「最新の統計は中国経済がこれまで考えられていたよりも強い成長基盤で年初を迎えたことを示している」と指摘しているが、ご存じの通り、中国共産党が公表する経済統計は、なかなか信用が置けない。何しろ、現在の中国経済は確実にデフレ化している。
 中国のGDPデフレータは、25年末までに11四半期連続でマイナス。その割に、公式統計では経済成長していることになっている。謎としか言いようがない。名目GDPは低迷しているが、GDPデフレータがマイナスで、実質がプラスで「計算される」状況になっているのである。
 中国の公式発表については、全体的に当てにならないが、GDPデフレータは「物価の定点観測」をしているのでごまかしにくい。GDPデフレータのマイナス継続は事実だろう。
 ちなみに、イラン戦争勃発とホルムズ海峡封鎖を受け、中国も輸入物価が急騰することになるが、輸入デフレータの上昇はGDPデフレータを引き下げる。理由は、輸入がGDPの控除項目であるためだ。
 例えば、2021年、22年、日本の輸入物価は急騰した。輸入デフレータは、21年が対前年比15%超、22年が27%超であった。それにもかかわらず、GDPデフレータは21年が対前年比0%、22年も0.6%に過ぎなかった。輸入デフレータの上昇は、GDPデフレータ全体をマイナス方面に引っ張るのである。
 中国の最大の問題、あるいは中国共産党にとっての「災厄的」な課題は、毎年、労働市場に参入する1200万人強の若者の雇用確保である。1200万人である。想像を絶する。
 中国の不動産バブルは崩壊過程が続いており、26年2月の中国新築住宅価格は前月比0.3%の下落となった。前年比では3.2%下落と、8ヵ月ぶりの大幅マイナス。
 中国の不動産セクターは、危機発生からほぼ5年が経過したが、依然として経済の重荷になっている。何しろ、中国の不動産セクターは、GDP全体の3割を占めている。さらに、不動産価格の下落は家計支出を抑制する、いわゆるストック効果も発生している。加えて、製造業がトランプ関税で打撃を受ける中、1200万人分の雇用を新規創出するなど、不可能である。
 中国の若年層失業率は、25年後半以降、17%前後の「高止まり」状態が続いている。中国は若年失業統計について、23年に公表を突如停止した。いわゆる「横たわり族」を失業者とみなした場合、若年失業率は最大で46.5%に達するという北京大学副教授の試算が注目を集めている。
 いずれにせよ、バブルが崩壊した国で1200万人分の雇用を新規創出するのは困難極まる。中国政府は対策として「AI」「ロボット」等を打ち出しているのだが、話は逆である。現在の中国は、生産性を高めてはいけない。問題は(日本のような)人手不足ではなく、雇用の不足なのだ。
 中国の不動産バブルの崩壊は、結婚適齢期世代の「男性」の心境変化の影響が大きい。中国では、結婚する際に「住宅」「車」「彩礼(結納金)」を用意しなければならず、それが当然という「空気」がバブルを支えてきた。
 ところが、若い男性が結婚ではなく独身を好むようになってしまい、中国の婚姻率・出生率は急低下。中国の25年出生数は792万人と、前年から17%も激減した。何と、実に287年前、清朝時代の1738年と同じ水準になってしまったのである。
 合計特殊出生率も1を割り込み、韓国の水準に近づいている。婚姻数も激減し、24年までの10年間で、婚姻数は何と53%減。特に、大都市において「若者が結婚できない」という状況が顕在化しつつあるのだ。
 となると、中期的には労働者人口の過剰は抑制されるわけだが、短期では無理だ。とりあえずは毎年、1000万人を超す「ヒト」が労働市場に新たに参入し続ける。
 日本の場合、ロボット導入などの生産性向上の投資は、人手不足という問題を解決するため、必須である。ところが中国の場合、生産性向上の投資は「ヒトを雇うより安い」という理由で推進されている。つまりは、中国では生産性向上の投資が「デフレ促進」になってしまうのである。 
【中国のGDPデフレータ(対前年比%)】出典:IMF
【中国のGDPデフレータ(対前年比%)】出典:IMF