日本のエネルギー自給率は先進国の中でも低く、その8割を化石燃料に依存し、特に原油はその90%以上を中東地域から輸入しています。
LNGや石炭も海外からの輸入に頼っており、アメリカとイスラエルによるイラン侵攻、中東情勢の悪化、海上輸送ルート(ホルムズ海峡に象徴されるシーレーン)のリスクなどの国外要因に、日本の電気代・ガソリン代・物価全体が振り回される構造になっています。
今回の地政学リスクは、日本が再生可能エネルギーを急速に拡大すべきであることを改めて示しています。
多面的な再エネの価値
化石燃料依存は「コストプッシュ型インフレ」を招き、家計や企業を圧迫します。石油・LNGの高騰は物流・製造業・農業・漁業など幅広い産業の原価に直結し、最終的に物価上昇と実質賃金の低下につながります。一方、太陽光や風力は燃料費ゼロであり、国際価格の変動から自由で長期的な安定電源となります。
エネルギー安全保障の観点からも再エネ拡大は不可欠です。化石燃料輸入は供給国への依存と海上輸送リスクを伴い、日本のレジリエンスを低下させますが、太陽光・風力・地熱などの再エネは国内で生産でき、分散立地が可能で災害時のリスク分散にも有効です。
さらに、気候変動対策と産業競争力の両面でも再エネ拡大は避けて通れません。世界では再エネ・蓄電池・EV・水素などのクリーンテック分野での競争が激化しており、欧州や中国は巨額の投資を行っています。再エネ導入の遅れは日本が次の産業革命の主導権を失うことにつながります。政府は脱炭素に向けた目標を掲げてはいますが、送電網整備や洋上風力・地熱開発などの実績は十分とはいえません。
経済性でも著しい進歩の再エネ
再エネの経済性は近年大きく向上しています。国際再生エネルギー機関(IRENA)によれば、2024年に導入された再エネの9割以上が火力より安価であるとされています。
日本では土地・系統コストが高いものの、設備価格の国際的な下落は日本市場にも波及しています。また、太陽光や風力などの再エネは、一度設備を作れば「燃料費ゼロ」であり、国際情勢には左右されず、運転コストが低いという特徴があります。そのため、長期的に見れば最も安定した低コスト電源になることができます。
一方化石燃料は「燃料費」が価格を押し上げています。化石燃料発電(石炭・LNG・石油)は、国際価格の変動、中東情勢などの地政学リスク、輸送コストに強く左右されます。原子力は建設・安全対策コストが高騰しています。新規原発の建設費、安全対策費、廃炉・廃棄物処理費は増大し、実際の発電コストは高止まりしています。さらに、建設期間が長く、投資回収に時間がかかります。
また、再エネの拡大は地域経済にも利益をもたらします。日本の化石燃料輸入額は、2023年度には約26兆円に達しており、化石燃料輸入は、毎年巨額の資金が海外に流出することを意味します。しかし、再エネを拡大することによって、化石燃料輸入により海外流出していた資金を国内の設備投資・雇用に回すことができるほか、地方に立地する再エネは税収増や地元企業の仕事創出につながります。蓄電池やスマートグリッドなど周辺技術の成長も期待できます。
取り組むべき5つの施策
日本が再エネを拡大するためは以下の施策が重要です。
第一に、送電網の大規模増強と市場制度改革です。北海道・東北から本州への連系線強化、洋上風力向け海底ケーブル整備、AIを活用した需給予測など系統運用の高度化が必須です。また、FIP制度の改善や分散型電源の価値評価など、市場設計の見直しも求められます。
第二に、洋上風力・蓄電池・水素など戦略分野への産業政策強化が必要です。洋上風力の長期導入目標の明確化、港湾整備、サプライチェーン育成などを国家プロジェクトとして進めるべきです。蓄電池や水素インフラ、需要側管理の普及促進も重要です。
第三に、地域主導の再エネモデル構築です。地域新電力の支援、地元還元型プロジェクトの推進、地熱・小水力など地域資源の活用、また景観や環境への配慮を前提に適地選定ガイドラインやアセスメント制度の整備が必要となります。
第四に、家庭・企業での自家消費型再エネの普及です。新築住宅への太陽光発電パネル設置義務化の全国展開、既存住宅への導入支援、企業のRE100対応を後押しするPPA普及や調達市場整備が求められます。
最後に、国のエネルギー戦略として化石燃料依存の計画的削減と再エネ比率の明確な中期目標設定が不可欠です。
送電網整備、戦略産業育成、地域主導のモデル支援、家庭・企業の再エネ普及、化石燃料依存の縮小といった政策を総合的に推進することによって、日本はエネルギー安全保障の強化、物価の安定、産業競争力の向上、地域活性化を同時に達成できるのです。再エネの拡大は、日本の将来にとって戦略的かつ不可避の選択肢であるといえます。



























