古琴:どうだい、寛政から250年後、時代を超えた令和への旅は、面食らったろ。
八:来た途端、老中首座の姐さんが総選挙で圧勝したって話ばかりっすね。
熊:圧勝? あっ、しょう。
八:真面目に聞きやがれ(パシっ)。
熊:総選挙って、真ん中で歌う奴を決めるもんだろ。
八:それは、看板娘・茶屋娘たちの人気の競い合いだ。
熊:歌麿が描いた水茶屋の娘たちみてぇなもんか。
蔦重:こちらは誰に政治(まつりごと)を任せるかを決めるために、札を入れるやつだよ。
八:そんな大事なことを、オレ達みたいに学のねぇ民草に決めさせて良いんですかい?
蔦重:「トリ合えず・トリ急ぎ・何とかする」つもりの「中道」は、民草からは「トリ繕い」に見えてしまったようだな。
八:「中道」は、右でも左でもない、じゃ「中庸」なのか「穏健」なのか、よく分からねぇ。
熊:鶴田浩二って粋な役者が「右も左も真っ暗闇じゃござんせんか」って歌ってたって。
八:右も左も極端はいやだ。それに俺たちの時代にも「白河の清きに魚も住みかねて もとの濁りの田沼恋しき」と詠んだな。どこまで「にごり」が許されるのかだな。[B:
蔦重:なんか「こだわり」の強すぎるところも、避けられたようだ。極端なのは嫌だけど、かといって、トリ繕いは胡散臭く見えちまった。
古琴:今の世では、世界の国々が集まって「五輪」という催しがある。4年に一度なので、周到な準備で迎えられる。政治(まつりごと)でも6年毎に半分が入れ替わる参議院に対して、衆議院ってのは突然の解散・総選挙がある。皆大慌てだった。
八:五輪は、「人事を尽くして、天命を待つ」。こちらは「人事を尽くす間もなく、民命を問うた」ってわけだ。
古琴:おっ、調子良いね。
蔦重:ところで、なんでこんなに勝ったんすかね。関ヶ原や山崎の合戦なんてもんじゃない。
熊:姐さんがすごいんですかい?
古琴:確かに人気はある。だが、私は少しばかり違う見方だよ。今回は民草が姐さんの一派を、ある意味「市場連動指数」と見なしたのではないかと。
八:何ですか、それ。

政治(まつりごと)の「指標連動型投資」



古琴:カネを預けて、その利息で稼ごうって時代だ。そこで流行っているのが「インデックス投資」。市場指数に連動する投資信託(インデックスファンド)に金を預けて、手軽に市場全体へ金を分散投資するやり方だ。初心者や長期で資産をつくろうって奴に向いている。
八:どんなカラクリなんです?
古琴:賭けをするとき、「ちょいヤバ」か「うんとヤバ」か、あるいは「チョイと稼ぎ」か「ウンと稼ぎ」か、どうする?
八:「うんとヤバ」でも「ウンと稼ぎ」ならば、大博打になる。
熊:一攫千金狙い…、俺はそうだな。
八:俺は僅かでも確実な「ちょいヤバ」「チョイと稼ぎ」だな。
蔦重:俺は、両方に金を分けるな。
古琴:さすが耕書堂。それらの「どれか」ではなく、「どれも」を組み込んだ枠組(全体の資産構成:ポートフォリオ)をつくって、それ全体に張る。そうすれば、少しずつでも確実に稼ぎが増していくかもしれない。
蔦重:そうか、姐さんたち一派は、右から左まで全部が揃ってるって見なされたので、そんなに大きく踏み間違えないだろう、と見れられたということなのか。
古琴:その通り。なので、極端に賭ける「ちょいヤバ・ウンと稼ぎ(ハイリスク・ハイリターン)」を避けて、姐さんの一派、つまり幅広の「指数連動型」に札を入れたってことだね。
八:なるほど、右にかき回されるのも、左に振れるのも嫌だってことか。
熊:となると、その市場指数とやらで大ぐくりにした枠全体に札を張るってことかい。
八:中道は真ん中だけど、幅広じゃねえってことか。
古琴:ただし、よく考えている連中は賢い若い衆の「みらい組」ってところに張ったらしい。
蔦重:姐さんの一派は自由と民主の一派だけ、今やその他も含む「自民“等”」かも(笑)。
古琴:いずれにせよ、今回わかったのは3つの老朽化だな。1つに、政治の仕組み自体(制度)、2つに政治を担う連中、3つに民衆の意識。安定志向だが、成熟意識とはほど遠い。
八:「ばけばけ」って芝居に出てくる街の連中と同じですね。持ち上げたり、ひきずり降ろしたり。
古琴:それが「ポピュリズム:大衆迎合主義」の温床だな。米藩のトラ殿様も、それに乗っかっているけどね。
八:ところで、政治(まついごと)の安定って、何を意味するんですかね…。
古琴:安易な妥協はしないで欲しいけど、大胆着手と好き勝手は紙一重。姐さんがはしゃぎ過ぎないよう見張らんとな…。

「りくりゅう」と「とくりゅう」



蔦重:ところで、「りくりゅう」と「とくりゅう」ってのも話題ですね。
古琴:今の世を表す2つの「りゅう」だね。
八:なんです、その「りゅう」ってのは
熊:「緋牡丹博徒おりゅう」ってのを、藤純子って別嬪(べっぴん)が演じていたぜ。
八:お前は、なんでも博徒か侠客か女の話にしたがる(パシっ)。
古琴:「りくりゅう」は、日の本中に感激を呼び、涙腺をゆるめさせた、しっかり者同士の若い男女の組で、氷の上で舞うのが息をのむほど粋(いき)だった。
蔦重:前半の負け戦をひっくり返して大勝、世界中の賞賛を浴びて、見事に感涙させましたね。
古琴:「とくりゅう」の方は、まったく逆。日の本中を震撼させて、眼を顰(ひそ)めさせている。どちらも「組」なんだけどね。
八:どういうことっすか?
古琴:「りくりゅう」の方は、組が、大胆かつ繊細な、お互いの「刷り合わせ」でできており、寸分のずれもない。互いの信頼と絆の組だ。
蔦重:まるで歌麿の絵だな。そもそも「刷り合わせ」ってのは、何枚もの版木を重ねた多色刷りのことだ。その意味じゃ、多くの職人さんの手腕と同じ、日の本文化の粋(すい)だね。
古琴:「とくりゅう」の方は、「匿名」「流動」型と奉行が名付けたものだ。
熊:長谷川平蔵、鬼平の旦那が追いかけている火付け盗賊の一味の類かね。
古琴:「とくりゅう」は「りくりゅう」と組のつくり方がえらく違うんだよ。「とくりゅう」の一味の方は、元締めが、型の決まった端切れ(モジュール)を単純に寄せ集める「組み合わせ」で「組」にする。まともに働くことをせずに美味い話に乗りたい若い奴らをかき集め、悪ささせてから使い捨てる。
八・熊:ひでぇ連中だ、しばいてやろうか(怒)。
蔦重:若い連中には感心させられたり、失望させられたりですね。
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毎度の戯れ言・与太話、お粗末さまでございました。